カチメン!就活コラム

この表情出来ますか?-共感を生み出す表情

作成者: 清水建二|24/04/14 4:00

こんにちは。カチメン!表情監修の清水建二です。

前回のコラムでは、ネガティブな印象を与えかねない表情のクセについて解説しました。「笑顔になるとき、鼻の周りにしわが生じると、嫌悪表情が混ざっているように見える」「笑顔になるとき、非対称に口角が上がると、軽蔑表情が混ざっているように見える」ということでした。クセを持っている人は、クセが生じなくなるよう表情筋を調整し、適切な笑顔をつくれるようにすることが大切です。

これまでのコラムでは、興味関心、熱意・真剣度、笑顔のつくり方と伝え方を解説してきました。本日は、この3つ以外の表情。応用的な表情を解説したいと思います。それは、共感を生み出す表情についてです。この表情をすると、相手は、あなたに助けの手を差し伸べ、願いを受け入れ、何らかのミスをしても許したくなってしまう。こうした可能性を高める表情です。もしかしたら、社会人になった後の方が役に立つかも知れません。

共感を生み出す表情とは、どんな表情でしょうか? 次の手順で表情筋を動かしてみて下さい。

最初に、眉の内側を引き上げて下さい。眉が八ノ字になっていれば正しく出来ています。次に、口角を引き下げて下さい。「への字口」と表現されることがあります。最後に、下唇を引き上げて下さい。上あごに梅干し状のしわが出来ていればOKです。


眉の内側を引き上げ、口角を引き下げ、下唇を上げる


これは、私たちが悲しみを抱くときに生じる表情です。そう、共感を生み出す表情とは悲しみ表情のことなのです。私たちは悲しみを抱くときに自然とこの表情になります。眉の内側が引き上がることで、涙腺が緩み、涙が流れやすくなります。口角が引き下がり、下唇が引き上がる理由はわかっていません。しかし、私には、声を出して泣いてしまう直前の表情に見えます。声を出し、大勢の人に助けを乞う前に、「目の前にいるあなた、助けて」という声なき声が聞こえて来る感じがします。

私の解釈はともかく、私たちは、悲しみ表情をみると、その人の窮地に共感し、助けたくなってしまう心性があることがわかっています。例えば、デンバー大学のガンダーソンらの研究から、ウソ泣きをしている人に比べ、心から悲しみを抱いている人に対して、より共感し、多くの寄付金を提供しようとすることがわかっています。

しかし、重要なのは、悲しみ表情を構成する動きの中でも、眉の内側が引き上げられる動きです。この動きは、心から悲しみを抱いている人の表情には表れるものの、ウソ泣きには表れないことが諸研究からわかっています。

興味深いことに、私たちは、この眉の内側が引き上げられる表情を、人だけでなく、動物にも投影するようなのです。保健所で保護されている犬の中で、新しい飼い主が早く見つかる犬とそうでない犬がいます。その違いを観察したところ、飼いたい犬を探しに来る人を、眉の内側を引き上げて見る犬―犬に眉はないので、正確には、人間の眉がある部分―は、こうした表情をしない犬に比べ、新しい飼い主が早く見つかる、ということがわかりました。

この表情の使いどころは、いつでしょうか?

就職面接の場なら、どうしてもその会社に入社したく面接の終わり際に「どうかよろしくお願いします」というような場面でしょうか。冒頭でも書きましたがこの表情は、社会人になってからの方が役に立つかも知れません。典型的なのは、謝罪場面です。「申し訳ありません」とハノ字眉で言うことで、謝罪の通りやすさが変わってくるでしょう。

こうして文字にしていると、小手先のテクニック感が漂いますが、こうした場面をリアルに思い描くと、この表情の重要性がわかると思います。

レストランにふと立ち寄ったところ、「申し訳ございません。満席でご利用になれません」。宿泊先のホテルでソープのケースが壊れており、ソープが出ないと申し出たところ、「申し訳ございません。新しいものと交換いたします」。

接客業は笑顔が基本と言われますが、こうした場面での適切な表情は、笑顔でなく、眉の内側が引き上げられる動きを伴った悲しみ表情でしょう。

この表情は、就職活動では必須ではないかも知れません。しかし、表情筋は様々な箇所を動かせば動かすほど、自由自在に動くようになります。特に、この眉の内側が引き上げられる表情は、練習しないと意図的に動かすことが難しい表情ですので、練習のし甲斐があるでしょう。興味関心、熱意・真剣度、笑顔の基本表情をマスターした人は、こうした応用表情にも挑戦してみてはいかがでしょうか。

ではでは、練習頑張って下さい。

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