こんにちは。カチメン表情監修の清水建二です。
前回のコラムでは、「熱意・真剣度の伝え方【応用編】」について解説しました。これまでの流れと異なる(異なるように思われる可能性がある)、あるいは、特段の事情があって慎重を期すとき、眉を引き下げることで、長いセリフの中でも効果的に熱意・真剣を伝えられる、ということでした。
本日は、気持ちを伝えるのが上手な人と下手な人について解説します。
自分の気持ちを伝えるのが上手い人がしていること。それは、言動を一致させることと相手の目を見て話すことの二つです。もちろん、それ以外にもたくさんあります。しかし、この二つは、基本かつ最重要、そして、私が、面接含む数々のプレゼンテーション場面を観察して来た中で、大部分の伝達力のある人に備わっているものだと感じています。
最初に、言動一致。自分の発信する言葉(状況描写含む)と表情(ボディーランゲージや声の調子など非言語の要素含む)が一致し、両者が矛盾しないことです。
「面接で表情が重要な理由~真顔はどんな印象を与えるか~」のコラムで紹介したメラビアンの法則を思い出して下さい。言動が一致していないとき、言葉からは7%、声の調子や口調からは38%、ボディーランゲージ(表情含む)からは55%の影響を受け、メッセージが適切に伝わらない、というものでした。
「嬉しいです」と言いつつ、笑顔でなければ、表情の方に引っ張られ、「嬉しくないのでは?」という印象を相手に与えてしまう。メラビアンの法則と類似のことが、日本人にも当てはまることが知られています。
パフォーマンス学研究の第一人者である佐藤綾子博士の、日本人を実験参加者としたデータによると(実践女子大学研究室データ、1994年)、好意の総計は、言葉が8%、周辺言語(声)が32%、顔の表情が60%の影響力を持つとのことです。約30年前の日本人は、顔の表情に大きな影響を受けていることがわかります。現在の日本人は、カメラ付き携帯やスマホの普及によって、自撮りが当たり前になり、より顔に向ける関心が高まっているのではないかと思われます。
言動を一致させることで、自分の伝えたい印象を相手に誤解なく伝えることができるわけですが、ここで疑問が生じます。感情に関わる言葉と表情を一致させるのは、わかりやすい。「嬉しい」「楽しい」「素晴らしい」などポジティブな言葉には、笑顔(幸福表情)が、言動一致です。「残念でした」「不安でした」「イライラしました」「嫌でした」などのネガティブな言葉には、それぞれ、悲しみ表情、恐怖表情、怒り表情、嫌悪表情が、言動一致です。生じる疑問とは、感情と関係のない言葉の場合です。例えば、数字、場所、食物、人名…等々。
面接官に仕事をする上で大切なことを聞かれたあなたは、「共感力」と答える。どんな表情で伝えればよいでしょうか?「共感力」という言葉は、ポジティブにもネガティブにもなり得ます。相手の気持ちを適切に汲みとり、ニーズに合った行動が出来るならば(認知的共感といいます)、ポジティブでしょう。一方、相手の感情の波に飲み込まれてしまい、適切な援助が出来ない、あるいは、何も出来なくなってしまうならば(情動的共感といいます)、ネガティブでしょう。
感情と関係のない言葉の上手な伝え方。それは、「共感力」という言葉に込めたいあなたの気持ち次第。興味関心を伝えたいのか、熱意・真剣なのか、あるいは、ポジティブな印象で笑顔か。あなたの気持ち次第だからこそ、面接で話す内容(予想問答などの準備含め)に気を配って欲しいのです。自分の発する言葉に自分はどんな感情を抱いているのか。そこがハッキリすれば、自分の気持ちを上手に、しかも、自信を持って伝えることが出来るでしょう。
自分の気持ちを伝えるのが上手い人がしていることの二つ目。それは、相手の目を見て話すということ。「何を当たり前な」と言われてしまいそうですが、面接という特殊な場では、なかなか難しいのです。
視線の向かう先は、意識が向かう先です。面接官に視線が向けられていれば、意識は面接官に向かっています。面接官を意識している会話、問答となります。話す内容が、少しくらい、ぎこちなくても、失敗してしまっても、一生懸命伝えようとしていることは伝わります。
面接で面接官の目を見て話せない理由に、緊張していることと頭の中のリストを見て話しているということが大きいと思います。
過度に緊張しているとき、面接官の顔を見ると、さらに緊張してしまうので、視線を背けたり、視線が泳いでしまいます。あるあるなのが、視線を下に向けたまま話してしまうこと。私たちは、内省するとき(自分に話しかけるとき)、視線を下に向けます。自分に意識を向けるためです。視線が下のままだと、面接官に「伝えようとする意識がないのかな」と思われてしまう、また、自信がない印象を与えてしまいます。
もう一つは、頭の中のリストを見て話してしまうことで、視線が落ち着かなくなってしまう。頭の中のリストとは、面接の準備のために作った想定問答集のことです。この問答集を思い出しながら話そうとするとき、視線を正面に維持できない。問答集を思い出すためにある程度視線を外すことは、問題ありませんが、それが過度になってしまうと、あなたの気持ちは伝わりません。
言動を一致させ、相手の目を見て話せるように、たくさん練習しましょう。(ただし、相手を「過度」に見つめたまま話すと怖いので、ちょうどよい視線の合わせ方をつかんで下さい)前者も後者も、「カチメン!」アプリや鏡を使っても出来ますが、対人練習も大切です。OBOG訪問、説明会、模擬面接などの場を積極的に利用し、大人と真剣に話す機会を作りましょう。
ではでは、練習頑張って下さい。次回は、笑顔の伝え方【応用編】について解説したいと思います。