こんにちは。カチメン!表情監修の清水建二です。
生成AIの進展は日進月歩。毎日のように新しいAIサービス、アプリや機能が生まれ、社会のあり方、仕事のあり方を変えています。
様々な企業がAIの活用法や限界を考え、将来どんな人材が活躍できるか、AIと共存できる人材を育てるにはどうしたらよいかを考えています。
就職活動をする皆さんが企業側の目線に立ち、AI×人材というテーマを考えておくことは、面接におけるアピールポイントに新たな切り口を見出し、就職後にAIと共存できる人材になるうえできっと役立つと思います。
これまでAI時代に通用する仕事術【マネジメント編】【チームワーク編】と具体的なテーマで綴ってきましたが、今回は、会話ができる生成AIの「チャットボット」が人間の親しい関係(友人・恋人)の役割をどこまで果たせるかを、対人関係研究の理論から評価を試みたSmithら (2025)の研究を基に、コミュニケーション全般について考えたいと思います。
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AIとのコミュニケーションに欠けているもの |
生成AIチャットボットは、相談相手になり、励まし、気の利いた返答も返してくれます。
孤独を感じたときに、いつでも呼び出せて、否定されずに話を聞いてもらえる体験は魅力的です。
実際、研究でもチャットボットが「理解された」「大切にされた」と感じさせ、つながり感を生むことが示されています。
しかし、ここで注意したいのは、AIとの会話には身体性と相互性が薄いという点です。
これが続くと、生身の人とのコミュニケーションが鈍るリスクがあります。
職場では、声色、沈黙、距離感、表情、ちょっとした所作が「この人は安心して話せる」「今は踏み込まない方がいい」を決めます。
ところがチャットボットは身体を持たないため、握手やハイタッチなどの身体的接触によるコミュニケーションはできず、物理的な用事(迎えに行く、差し入れをする等)も担えません。
配属先の上司・同僚・部下、そして顧客が見ているのは言葉だけではありません。
人は身体を持つからこそ、「遠いところから駆けつけてくれた」「何度も足を運んでくれた」「時間をかけて資料を深く読み込んできた」「表情・声・身体の動きを意識したプレゼンを用意してきた」「何度も相談に乗ってくれた」といった「身体を動かすコスト」の重さが分かります。
このコストを払ってでも関わろうとする姿勢から、熱意や本気度が伝わるのです。
AIとの会話は便利ですが、身体を動かして関係を取りに行く経験が薄いままだと、こうした評価の土台になる振る舞いを磨くのは難しいでしょう。
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面倒な人間とコミュニケーションする大切さ |
次に相互性です。
人間関係は「無条件に肯定してくれる」ものではありません。
むしろ、選ばれるかどうかの不確実さや、相手にも都合があるからこそ、調整・配慮・説得が必要になります。
チャットボットは常に応答的に設計されているため、「選ばれる喜び」が得にくいのです。
就活はまさに「相手に選ばれる」場であり、社会人になると今度は「部下になり得る人」や後輩からも選ばれる(信頼される)必要が出てきます。
また、社会人になれば社内外を問わず、日々、調整・配慮・説得の連続です。
相互性のある関係で揉まれる経験が減ると、そこで必要なコミュニケーションの感覚が育ちにくくなります。
さらに、使い方によっては負の連鎖も起こり得ます。
デジタルな対人技術が、物理的な対人場面へのアクセスを減らし、孤独・対人不安のある人ほど社会的スキルが低下し得る(disembodied disconnect hypothesis)ことがわかっています。
実際、ChatGPTを4週間毎日使う実験では、終了時に「他者と交流する頻度が減った」と報告され、とくに使用時間が長いほど頻度の減少幅が大きいことがわかっています。
また、高頻度の利用は、依存や幸福感の低下と関連する可能性も示されています。
では、就活生・転職者をはじめ、これからの私たちはチャットボットとどう向き合えばよいでしょうか。
結論はシンプルです。AIは「補助輪」、人間は「本番」ととらえましょう。
AIには、面接回答の壁打ち、想定質問の反復練習、職務経歴書の推敲、感情の整理を任せる。
カチメン!を利用する皆さんは、自分の想いを表情と声に乗せる練習も出来ますね。
一方、人間相手の機会(OB/OG訪問、就職説明会、面接・面談、雑談の場)を意識して確保し、身体性と相互性のある場で実戦経験を積む。
AIの便利さは武器になりますが、近い将来あなたが社会人になり、顧客と接点を持ち、誰かの先輩・上司になるなら、「身体を動かして、調整・配慮・説得する力」は節約できない「コスト」なのです。
ではでは、実践を重ねて下さい。
参考文献:Smith, M. G., Bradbury, T. N., & Karney, B. R. (2025). Can Generative AI Chatbots Emulate Human Connection? A Relationship Science Perspective. Perspectives on psychological science : a journal of the Association for Psychological Science, 20(6), 1081–1099. https://doi.org/10.1177/17456916251351306