求職者の表情を見て、「企業側の条件に同意しているか」分かりますか? |
まずは、問題から始めましょう。あなたが採用面接官だと想像しながら考えてみてください。
問題: 動画は、以下3つの条件について、面接官が具体的な文言を伝えた直後の求職者の表情を捉えたものです。 |
回答と解説 |
① 給与
鼻の周りにしわが寄っています。
これは嫌悪の表情です。
嫌悪感は、不快なものを排除したいという感情に基づきます。
この表情が給与の提示直後に現れたことから、給与に対して「嫌だ」と感じていると考えられます。
したがって、正解は「不同意」です。
② 給与の見直し時期
真顔です。
真顔からは、何も判断できません。
たとえ言葉で同意や不同意を伝えていたとしても、その本心や本気度までは分かりません。
したがって、正解は「不明」です。
③ 業務場所
眉が引き上げられ、口が開いています。
これは驚きの表情です。
驚きは、「もっと知りたい」というニーズを示します。
つまり、業務場所についてさらに詳しく聞きたいと思っている状態です。
詳細を踏まえて判断したいという姿勢なので、正解は「不明」ですが、「詳細を詰めたい」という意思表示と考えられます。
[PR]
【実験】面接官の感情認識能力がどのような影響を与えるのか? |
いかがでしたか?
求職者の本心をどれくらい読みとれたでしょうか?
今回、皆さんに「面接官の視点」で考えていただいたのには理由があります。
それは、面接官の感情認識能力が高いほど、求職者だけでなく、双方にとっての利益が高まることが、Mehu(2018)らの実験から明らかにされているからです。
求職者がわかりやすい表情を示すことが、win-winの関係を築くために有効だということも示唆できるでしょう。
こんな実験です。
実験参加者を集め、感情認識能力を測定します。
俳優が14種類の感情(誇り、喜び、娯楽、快楽、安堵、興味、不安、恐怖、絶望、悲しみ、嫌悪、いらだち、怒り、驚き)を表現した短い動画を観てもらい、どの感情かを回答してもらう形式です。
次に、参加者を従業員役とリクルーター役にランダムに振り分け、8つの労働条件(給与、休暇日数、引っ越し費用の補助など)について、できるだけ多くの利益を得られるよう交渉してもらいます。
交渉の成績に応じて賞金が支給されるため、参加者は真剣です。
各条件は5つの選択肢から選ぶ必要があり、どの選択肢を選ぶかによって得られるポイントが変わります。互いの利得構造は知らされていません。
その後、個人の利得(個人が得たポイント)と、両者の合計得点(共同利得)を記録します。
【結果】面接官の感情認識能力の高さは、相互の利得だけでなく高評価も得られやすい |
実験の結果、次のことがわかりました。
- リクルーターの感情認識能力が高いほど、共同利得が高くなった
- 従業員の個人利得も高くなった
- 感情認識能力が高いリクルーターは、相手から「協力的・好感が持てる」と評価された
この実験ではリクルーターと従業員が登場しますが、面接官と求職者に置き換えても、構造はほぼ同じです。
つまり、「会社側(面接官)」の感情認識能力が、求職者にとっても、企業にとっても重要な影響を与えるのです。
感情は言葉で説明されないことが多いですが、表情からその感情を読みとることで、本心を察し、より良い判断ができるようになります。
まさに、面接を「お見合い」にたとえると分かりやすいでしょう。
面接官は、求職者の強みも弱みも知りたいのです。そして、お互いに納得できる結論(採用/不採用)を導きたいのです。
「もし、私の面接官の感情認識能力が低かったら…?」と不安に思う方もいるかもしれません。
その可能性は、実際にあります。
だからこそ、明瞭な発言だけでなく、思いのこもった伝え方=表情が重要なのです。
「カチメン!」を活用して、伝わる表情表現を身につけていきましょう。
ではでは、実践を重ねて下さい。
※記事中の画像の権利は、株式会社空気を読むを科学する研究所に帰属します。無断転載を禁じます。
参考文献
Schlegel, K., Mehu, M., van Peer, J. M., & Scherer, K. R. (2018). Sense and sensibility: The role of cognitive and emotional intelligence in negotiation. Journal of Research in Personality, 74, 6–15. https://doi.org/10.1016/j.jrp.2017.12.003