こんにちは。カチメン!表情監修の清水建二です。
本日は、前回のAI時代に通用する仕事術【マネジメント編】に続き、AI時代に通用する仕事術【チームワーク編】です。
AIがいかに進歩しようとも、人間の介入が不可欠だと考えられる領域があります。
それは、個々のメンバーの想いや感情を把握し、皆で協力しながら進める必要のある業務です。
| どんな業務でしょうか? |
たとえば、新サービスの企画で営業・開発・広報が集まり、
「この仕様では現場が回らない」
「それではお客様が納得しない」
と本音をぶつけ合いながら、着地点を探る場面。
また、納期遅れが発生し怒っている取引先にどう向き合うかを、営業・カスタマーサポート・製造現場の責任者が集まって、
「何を優先してお詫びするか」
「どこまで代替案や値引きを提案するか」
を、相手企業の事情や担当者の気持ちを想像しながら決めていく場面。
さらに、一見するとパソコンに向かって一人でできそうな資料作成やデータ分析、プログラム開発であっても、
「何のための資料か」
「どの数字を重視するか」
「どこまでの品質を求めるか」
といった点を、上司や他部署の考え、そしてサービスを受け取る潜在的な顧客の想いとすり合わせること抜きには成り立ちません。
こうした「人の気持ちを汲み取り、すり合わせて、前に進める」仕事は、決して一部の特殊な職種だけではありません。
営業、企画、開発、管理部門に至るまで、ほとんどすべての業務が、このチームワークの延長線上にあるのです。
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感情を読み取る力とチームの成果の関係 |
感情を読み取る力とチームの成果の関係を調べた、興味深い研究があります。
アメリカの研究者たちは2〜5人のグループを多数作り、パズルやブレインストーミング、道徳的な判断、資源の分配交渉など、性質の異なる課題をたくさんやってもらいました。
その結果、「ある課題でよくできるグループは、別の課題でもだいたい成績が良い」という傾向が見つかり、グループにも人のIQのような「集団としての頭の良さ(collective intelligence:c因子)」があることが示されました。
しかも、このc因子は、「メンバーのIQの平均」や「いちばんIQが高い人のIQ」よりも、グループ全体の成績をよく説明していたのです。
では、このc因子を高めるものは何か。分析の結果、次の点が重要だとわかりました。
(1)メンバーの平均的な社会的感受性
=相手の表情や声のトーンから気持ちを読み取る力が高いこと
(2)発言が特定の人に偏らないこと
=全員がバランスよく話していること
(3)社会的感受性の高いメンバーが一定数いること
(この研究では女性であることが多かった)
言い換えると、「よく人の表情や空気を読むメンバーがいて、全員が安心して発言できるチームほど、いろいろな仕事で結果を出しやすい」ということです。
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AIができること、できないこと |
現時点で、言葉そのものはもちろんのこと、表情・声・ボディーランゲージ等の非言語から人の感情を推測するAIは、すでに存在します。
高い精度で、目の前の相手の幸福、怒り、悲しみ……等の感情を推測してくれます。
しかし、「なぜ」喜んでいるのか、怒っているのか、悲しんでいるのかという文脈や背景までは十分に理解できません。
ネガティブな感情をどう扱い、誰がどう伝えるとチームとして前に進めるのか、といった設計と実行は、人間の役割です。
たとえ将来、技術が進み、AIが感情の原因推測や解決方法を示せるようになったとしても、実際の現場に立ち、生身の相手の表情や声色を感じ取りながら、関係を壊さずに一歩を踏み出してもらうよう働きかけられるのは、身体を持つ私たち人間にしかできません。
(衝突が起きそうなコミュニケーションを代替してくれるAIが将来開発されても、そのAIによる「大変だけど頑張ってください」という励ましの言葉は、「疲れを感じる身体がないAIには、大変さはわからないでしょう」という反応を生み出してしまうでしょう)。
就活生の皆さんには、「どんな専門スキルを磨くか」と同時に、「どんなふうに人の気持ちを察し、チームで関わるか」も、AI時代の重要な武器として意識しておいてほしいところです。
ではでは、実践を重ねて下さい。
参考文献:Woolley, A. W., Chabris, C. F., Pentland, A., Hashmi, N., & Malone, T. W. (2010). Evidence for a collective intelligence factor in the performance of human groups. Science, 330(6004), 686–688. https://doi.org/10.1126/science.1193147