カチメン!就活コラム

『最後の鑑定人』表情監修者が解説:相手に共感してもらえる表情とは?――ドラマから学ぶノンバーバル読解・表現法

作成者: 清水建二|25/08/26 7:45

こんにちは。カチメン!表情監修の清水建二です。

本日のコラムでは、就活生・転職者に楽しみながらノンバーバル(表情やしぐさ等の非言語)について学んでいただけるよう、ドラマを題材にし、就活・転職で役立つ共感してもらえる表情解説したいと思います。 

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現在フジテレビ系列で放送中のドラマ『最後の鑑定人』は、元科捜研の経歴を持ち、卓越した鑑定スキルを誇る主人公・土門誠(藤木直人さん)と、彼の鑑定所に所属する心理学の専門家・高倉柊子(白石麻衣さん)が、科学的手法を駆使して複雑な事件の真相に迫っていくサイエンスミステリーです。 

高倉は、人の表情やしぐさから隠された嘘を見抜く能力に長けており、私、清水は、劇中で描かれる俳優さんたちの表情や所作、セリフに科学的根拠に基づいたリアリティを持たせるため、専門家監修として関わっています。 

 

コラムで解説するシーン



今回、注目したいのは、第三話のこちらのシーン。 

放火事件が発生。
被疑者は、ベトナムから来日した技能実習生のホアン・ヴァン・ギア(井阪郁巳さん)。

ホアンの技能実習先の社長、黒瀬達夫(片桐仁さん)のところに事情を聞きに行く高倉と、ホアンの弁護を担当することになった相田(迫田孝也さん)。 

事情聴取が終わり、会社を後にする際、ホアンと共に働いていた技能実習生らとすれ違う。
そこにホアンの弟、ミン(唐木俊輔さん)もいることに気づく相田。
足早に去っていく実習生たちを見つめる高倉。

ミンが立ち止まり、振り返る。高倉をじっと見つめる。
何かを訴えるような、助けを求めるような、そんな視線。

この視線と自身の過去の経験に重なりを覚え、ざわつきを感じた高倉は事件解決に向け、積極的に動き出す。 

 

このシーンから就活生・転職者が学べること


私たちが学べること、それは、「何かを訴えるような、助けを求めるような、そんな視線」です。
これはどんな視線、表情でしょうか。 

こんな実験があります。 

ガンダーソンら(2023)は、実験参加者に本物の悲しみの表情と、作られた悲しみの表情を見せたうえで、その反応を調べました。

最初の実験では、参加者に「これから見るのは、テスト結果を初めて知らされた人の映像で、良い成績の人もいれば、期待外れだった人もいます」と説明し、そのうえで真の悲しみ、または偽りの悲しみを示す人物の映像を見せます。
参加者に、その人物への共感の程度や、再受験を支援するために寄付したい金額を答えてもらいます。
 

別の実験では、参加者に「これから見るのは、愛する人が行方不明になり、インタビューを受けている人の映像です」と伝えたうえで、同様に真実の悲しみ表情と演技による悲しみ表情をしている人物の映像を提示します。
参加者には、表情の真偽を知らせないまま、共感度や寄付額を回答してもらいます。
 

実験の結果、いずれの実験でも、偽りの悲しみ表情よりも、本当の悲しみの表情を示す人物のほうが、より高い共感を得て、より多くの寄付をしたいと感じさせる傾向が見られました。 

「何かを訴えるような、助けを求めるような、そんな視線」とは、私たちが悲しみを抱くときに生じさせる表情。
具体的には、
眉の内側が引き上げられる+眉が中央に寄り引き下げられる動きのコンビネーションです。
この動きによって眉はハノ字の形になります。
 

眉の内側が引き上げられ、眉が中央に寄り引き下げられ、眉の形がハノ字になっている。 
私たちが本当に悲しんでいるときの特徴で、他者に共感を引き起こすことが知られている。 

※本画像の権利は、株式会社空気を読むを科学する研究所に帰属します。無断転載を禁じます。 

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就活・転職で相手に共感してもらう必要がある場面とは?


就活・転職で相手に共感してもらう必要があるのはどんな場面でしょうか。
例えば、 

・自己PRや面接:自身の困難や成長の体験を語り、共感を引き出す場面。

・プレゼン型選考:社会課題への関心や解決策を訴え、審査員の共感を得る場面。

・グループディスカッション:協調姿勢や思いやりを見せ、他者の共感を得る場面。 

 

就活後、社会人となった後は、いかがでしょうか。例えば、 

・クラウドファンディング:共感を呼ぶストーリーで出資や寄付を募る場面。

・CSR広報活動:社会貢献の取り組みを感情的に訴え、理解と支持を得る場面。

・社内チャリティー募集:イベントや寄付への参加を社員に促す場面。 


等々あると思います。
 


なお、眉の内側が引き上げられる+眉が中央に寄り引き下げられる動きは、信頼できる筋肉と呼ばれており、意図的に動かすのが難しいことがわかっています。

ハノ字眉を作ろうとしても眉間にしわが寄るだけになってしまったり、眉が水平に引き上がるだけになってしまったりすると思います。
ですので、この表情を意図的に作るというより、自然に感情が沸き出てくるような話を土台にし、その感情を呼び水にし、語れるよう練習することで表情に真実が宿るようになります。
 

テクノロジーとの関係で言えば、いかにChatGPTを用いて感動的な文章を作成することが出来ても、切実な気持ちがその文章に乗らなければ、偽の悲しみ表情にしかならず、共感を得られる可能性は低くなると考えられます。 

ところで、ミン役の俳優さんに撮影現場で演技指導させて頂いたのですが、この表情、とても上手でした。
表情筋が柔らかいというのもあると思いますが、感情移入も巧みなのだと思いました。
 

皆さまも、是非、様々な感情を抱くような体験を重ねて下さい。
表情が豊かになり、言葉に感情が乗る様が伝わりやすくなると思います。
 

ではでは、実践を重ねて下さい。